飲食店長から異業種へ転職すると、年収が下がることはあります。ただし、転職先の職種や任される役割、給与の仕組みによって変わります。今の年収と求人のモデル年収をそのまま並べるより、固定給・変動する収入・働く条件を分けると、違いが見えやすくなります。

私の場合、飲食店長時代にも歩合給がありました。未経験で不動産営業へ転職し、毎月の固定給も、転職後最初の1年間の総収入も下がりました。この記事では、その経験と一般的な確認方法を分けて、40代・50代で店長から異業種へ移るときの比較表と記入例を紹介します。

この記事で整理できること

  • 月給・年収のどこを同じ条件で比べるか
  • 歩合が発生しない時期を含めた収入の見方
  • 求人票・面接・内定時に確かめること

飲食店長から異業種へ転職すると年収は下がる?

「飲食業を離れるから下がる」と一括りにせず、業界・職種・役職のどこが変わるかを見ます。たとえば、店長から別業界の店舗運営へ移る場合と、未経験の営業事務へ移る場合では、評価される経験も給与体系も異なります。

今の給与に店長手当、時間外手当、深夜の割増、歩合が含まれているなら、まず内訳を分けます。転職後にその役職や勤務時間が変わると、基本給が近くても総支給額が変わることがあります。

厚生労働省が2026年8月31日に公表した「令和7年(2025年)雇用動向調査結果の概況」では、転職入職者の賃金は前職より増加40.8%・減少31.0%・変わらない25.5%でした(賃金変動状況が不詳の人を含むため、3区分の合計は100%になりません)。ただし、これは飲食店長の異業種転職に限った結果ではなく、賃金の変動と、賞与なども含めた最初の1年間の総収入は同じ指標ではありません。自分の条件は、次の表で確かめましょう。出典:厚生労働省・転職入職者の状況(PDF)

まず比較表を作る|固定給・歩合・初年度の収入を分ける

今の給与は給与明細や源泉徴収票、応募先は求人票や提示された条件を使って埋めます。金額は税金・社会保険料などを差し引く前の額面でそろえ、通勤費などの実費補填は給与本体と別欄にします。

給与条件を固定部分、変動部分、未確認の条件に分けて比較する図
比べる項目 現在の勤務先 応募先
固定部分 基本給・毎月の固定手当 基本給・手当の額と支給条件
残業・深夜勤務 実際の時間と支給額 残業の目安、固定残業代の有無・時間数・金額
変動部分 直近1年の賞与・歩合の実績 発生条件・算定方法・支給時期
未確認の条件 比較対象にする期間 試用期間中の給与、入社初年度の賞与・歩合
勤務時間・休日 勤務・休憩・通勤、休日の取り方 同じ項目を確認。繁忙期も含める
仕事内容・役割 担当業務と責任範囲 入社時の担当と、その後の評価・昇給条件

「未確認」は空欄のままにせず、その言葉を書いておきます。賞与実績やモデル年収は参考になりますが、応募した自分に同じ額が支給されるかは、別に確認する必要があります。

記入例|月4万円の差を、歩合で埋める前提にしない

次は比較方法を示す架空例です。筆者の給与額や実在する求人の条件ではありません。両社とも12か月を通常どおり勤務し、固定部分が変わらないと仮定します。残業代・賞与・歩合は別に比較します。

項目 現在 応募先
毎月の固定部分 30万円 26万円
固定部分×12か月 360万円 312万円
賞与・歩合 実績を資料で確認 支給条件・見込額は未確認
ここまでで分かること 固定部分の差は月4万円・12か月で48万円。総年収の差は、変動部分の確認が必要

この例なら、最初に考えるのは「歩合で48万円を取り戻せるはず」ではなく、毎月の固定部分が26万円の場合、生活を続けられるかです。将来の成果を見込む場合も、収入が増えない時期の支出と分けて整理します。

なお、固定部分の12倍は比較用の基準です。実際の入社後1年間は、試用期間や入社月、賞与の算定期間によって違いが出ます。暦年の1月〜12月と、入社日からの12か月も区別してください。dodaの案内でも、転職1年目の賞与は入社時期や会社の規定によると説明されています。出典:doda・転職1年目のボーナス

保存用|空欄版の給与条件比較表

この表をコピーするか画面保存して、気になる1社分を記入してください。金額は額面、期間は両社でそろえます。分からない欄には「未確認」と書きます。

項目 現在の勤務先 応募先
会社・確認日 __/__ __/__
比較する期間 __から12か月 __から12か月
基本給・固定手当 月__円/内訳__ 月__円/内訳__
残業・深夜勤務 時間__/支給額__ 時間__/固定残業代の条件__
賞与・歩合 実績__/発生条件__ 発生条件__/支給時期__
初年度・試用期間 比較時の条件__ 給与・賞与の条件__
勤務時間・休日・通勤 __ __
仕事内容・役割 __ __
家計への影響 継続する支出__ 変わる支出__
未確認の条件 __ 質問すること__

上の月30万円・26万円は計算方法を示す架空例です。次の筆者経験の約2割減から給与額を逆算したものではありません。

筆者の経験|飲食店でも歩合給だったが、不動産営業では初成約まで0円だった

ここでは、同じ「固定給+歩合」という言葉でも収入の出方が違った、私の勤務先での経験を紹介します。

飲食店長時代の歩合は売上に応じて発生し、私の経験では歩合が0円になることはありませんでした。その後、未経験で不動産営業へ転職したときは、毎月の固定給は約2割下がり、最初の1年間の総収入も減りました。約2割というのは固定給の変化で、初年度総収入の減少率ではありません。

転職先の不動産会社では、1件も売れなければ歩合は0円という仕組みでした。実際に、1件目を売るまで歩合0円が続きました。一方、1件の成約で大きな歩合になる可能性があり、当時の私にはハイリスク・ハイリターンの働き方に感じられました。

筆者の飲食店長時代は売上に応じて歩合が発生し、転職先の不動産会社では初成約まで歩合0円だった違い
筆者の勤務先での経験です。飲食業・不動産業全体の給与条件を示すものではありません。

この違いから、私が今、求人を比べるなら、歩合率だけでなく「何をしたら発生するか」「成果がない時期の固定給はいくらか」「いつ支払われるか」を一緒に確認します。これは現在の確認ポイントで、当時すべて確認したという意味ではありません。

この体験で示せるのは、固定給と初年度総収入が下がったこと、初成約まで歩合が発生しなかったことです。その後に必ず収入を取り戻せる、という話ではありません。

当時の仕事選びで重視した条件は、40代未経験転職で譲れなかった条件の整理にまとめています。

40代・50代の店長経験は、給与と働き方をセットで比べる

今の役職手当と、応募先で任される役割を分ける

店長経験が長い場合は、今の給与に役職や勤続による要素が含まれていないかを見ます。異業種で一般職として入るなら、店長と同じ責任・給与から始まるとは限りません。一方、教育や運営の経験が応募先の担当業務に重なることもあります。

「40代だからいくら下がる」と年齢だけで決めず、求人の業務内容、入社時の役割、その役割に対する給与を対応させましょう。転職先の選択肢から整理したい場合は、40代飲食店長の転職先と経験の活かし方を先に読むとつながります。

休日が増える場合も、毎月の生活費は別に確かめる

年収が下がっても勤務時間が短くなる、夜の勤務が減るなど、自分にとって意味のある変化は考えられます。ただ、休める時間が増えることと、毎月の支払いを続けられることは、それぞれ確かめたい項目です。

表の横に、住居費・返済・保険など継続する支出と、通勤費や食費など変わりそうな支出を書きます。家族構成や住宅ローンの有無は人によって違うため、自分の実際の支出を使ってください。額面と手取りも分け、現在の手取り率を応募先へ機械的に当てはめないようにします。

休日は年間日数だけでなく、曜日・連休・希望日の取りやすさも確認します。仕事内容は、入社後に覚えることと相談できる相手まで分かると、給与以外の比較もしやすくなります。

求人票・面接・内定時に、給与条件を確認する順番

求人票では「月給に含まれるもの」を書き出す

基本給、各手当、固定残業代を分けます。固定残業代があれば、対象となる時間数・金額と、それを超えた場合の扱いを確かめます。試用期間中だけ給与が変わるかも比較表へ追記します。佐賀労働局の求人票の案内でも、基本給・手当、固定残業代、勤務時間・休日、試用期間は確認項目として挙げられています。出典:佐賀労働局・求人票の見方

面接では、未確認欄から2〜3問選ぶ

給与だけをまとめて尋ねるより、求人票で分からなかった条件を具体的に聞きます。次は今から使うための質問例です。

  • 「提示されている月給の内訳と、試用期間中に変わる条件を教えていただけますか」
  • 「歩合は何を基準に発生し、いつ支払われますか。成果がない月の給与条件も確認したいです」
  • 「このモデル年収は、どの役割・経験年数・成果を想定した例でしょうか。入社初年度の賞与条件も教えていただけますか」

仕事内容の確認や回答の準備は、飲食店長から異業種へ転職する面接の準備へ。逆質問を広く整理したい場合は、40代未経験転職の逆質問も参照してください。

内定後は、書面と比較表を照合する

説明を受けた条件と、労働条件通知書などで提示された給与・手当・勤務時間・休日が合っているかを、承諾前に確かめます。違いがあれば、どの条件が適用されるかを書面で確認し、表を更新しましょう。dodaの労働条件通知書の解説も、求人・面接時の説明と通知書の条件を確認するよう案内しています。出典:doda・労働条件通知書の確認

保存用|面接・内定時の確認チェック

確認した項目に印を付け、説明を受けた日と資料名を表の余白に残しておきましょう。

  • □ 月給の内訳と、固定残業代の時間数・金額を確認した
  • □ 歩合が発生する条件、成果がない月の給与、支給時期を確認した
  • □ モデル年収の役割・経験年数・成果の前提を確認した
  • □ 入社初年度の賞与と、試用期間中の給与条件を確認した
  • □ 勤務時間・休日・仕事内容を比較表へ記入した
  • □ 内定時の書面と説明を照合し、違う箇所・未確認事項を承諾前に確認した

飲食店長の異業種転職と年収でよくある質問

月給が同じなら、年収も同じですか?

賞与・歩合・残業代の条件が違えば、年収も変わります。まず月給の内訳をそろえ、そのうえで変動部分を別に比較してください。通勤費や福利厚生が変わる場合は、家計への影響も別欄に書きます。

賞与や歩合の金額が分からないときは?

未確認として残し、発生条件と支給時期を聞きます。金額が確定しない部分は見込額と分かるように記し、固定部分だけの場合とも分けて考えます。実績がある人のモデル年収を、そのまま入社初年度の収入として使わないことが大切です。

未経験なら、年収ダウンを受け入れるべきですか?

一律に受け入れる必要はありません。生活を維持できる条件、希望する仕事内容、使える経験を照らして判断します。下がる理由が役割の違いなのか、手当の違いなのかも確認しましょう。自分に必要な条件の順番は、本文で紹介した優先条件の記事で整理できます。

希望年収はいつ伝えればよいですか?

希望条件を聞かれた面談・選考の場で、現在の年収、希望、必要な最低条件を区別して伝えます。dodaの解説でも、希望額とその根拠を事前に伝える考え方が示されています。エージェント経由なら担当者に確認時期も相談できます。出典:doda・転職にまつわるよくあるギモン

まとめ|まず1社分の給与条件を表に入れてみる

飲食店長から異業種への転職では、固定給が下がる場合があります。私も固定給と最初の1年間の総収入が下がり、同じ歩合給でも、飲食店長時代と不動産営業では発生条件が違いました。

まずは気になる求人1社を選び、現在の勤務先と並べて、固定部分・変動部分・未確認の条件を埋めてみてください。勤務時間・休日・仕事内容まで並べると、収入の差と、転職で変えたいことを一緒に検討できます。分からない欄が、そのまま次に確認する質問になります。

それでも一人で整理しにくい場合は、転職エージェントとの面談で、現在の給与の内訳と希望条件を相談する方法もあります。40代の転職エージェント初回面談で話すことを準備に使ってください。

参考資料

公式情報の確認日:2026年10月16日。支給条件は会社・募集内容によって異なります。