「場数を踏めば成長する」と言われても、毎日同じ仕事を続けていると、自分に何が身についているのか分かりにくいですよね。転職を考えた途端、「面接で話せる経験なんてあるだろうか」と手が止まることもあると思います。

私が大切だと考えるのは、経験の回数に加えて「何を考えて動いたか」を振り返ること。そして、次の職場で使える部分を言葉にすることです。

私は劇団員として活動した後、飲食店店長を経験し、40代で転職エージェントを利用して未経験の不動産リフォーム販売営業へ転職しました。この記事は、2020年に書いた「場数の踏み方」の体験談をもとに、転職準備につながる形で整理し直したものです。

劇団員時代の戸惑い、店長としての日々の判断。その二つを振り返りながら、今ある経験を自己PRの材料にする方法をお伝えします。

場数を踏むとは?転職に生かすなら「振り返り」までが一組

場数を踏むとは、実際の場面を何度も経験すること。接客、仕事の段取り、人への説明。日々の仕事にも、経験を積む機会はあります。

ただ、慣れたやり方を繰り返していると、その方法が別の現場で通じるかを確かめる機会は少なくなります。私が劇団員時代に気づけなかったのが、この点でした。

転職準備では、次の三つを一組で考えると整理しやすくなります。

  • 経験する:実際に仕事を任され、判断して動く。
  • 振り返る:うまくいった理由や、困った場面を言葉にする。
  • 次に生かす:応募先で使える部分と、新しく学ぶ部分を分ける。

勤続年数や担当業務は、経験の入口。そこから「自分は何を工夫したのか」まで掘り下げてみましょう。

劇団員時代に実感した、慣れた場所だけで経験を積む難しさ

舞台で当たり前だった声の出し方に戸惑った

劇団員だった頃の私は、自分の劇団の本公演や、劇団から来る仕事を中心に活動していました。本公演は年に1〜2回。そこでしっかり頑張れば、先につながると思っていたんです。

舞台では大きな声を出すのが当たり前になっていました。ところが、テレビの仕事が来たとき、どのくらい声を出せばよいのか分からなくなりました。

ディレクターから「舞台じゃないんだから普通に話して」と指摘されて、初めて自分が舞台と同じように声を出していたことに気づきました。

同じ「演じる仕事」でも、現場が変わると求められるやり方が違う。自分の慣れた場所の基準だけでは判断できず、戸惑った経験です。

慣れた場所の「当たり前」を振り返るきっかけに

当時は、外の現場を経験する大切さを十分に分かっていませんでした。舞台とテレビで声の出し方に戸惑った経験を振り返ると、慣れた場所の「当たり前」に気づくことも、場数を踏む意味の一つだったと感じます。

この経験から、転職でも「前の職場ではこうだった」で止めず、応募先のやり方を知る姿勢が大切だと考えるようになりました。

今までの経験を捨てる必要はありません。持っていけるものと、学び直すものの整理。私にとっては、それが環境を変えるときの大事な準備です。

飲食店店長の経験を、別の仕事に伝わる言葉にする

飲食店店長として働いていた頃は、社員やアルバイトと協力しながら、清掃、仕入れ、仕込み、料理やドリンクの提供、接客、店の雰囲気づくりに取り組んでいました。

経験が増えると、「この場面なら、こちらの対応のほうがスムーズだ」と判断できることも増えていきました。目の前の仕事をまとめると、目指していたのは料金に見合った価値を提供し、お客様に喜んで帰ってもらうことです。

こう言葉にすると、自分の仕事の軸がすっきりしました。

転職の自己PRでは、ここからさらに、具体的な行動を探します。次の表は経験を整理するための問いかけです。私の採用理由や成果を示すものではありません。

経験した仕事振り返るポイント
仕入れ・仕込み何を見て、量や順番を判断したか?
社員・アルバイトとの協力相手に何を伝え、どう役割を調整したか?
お客様へのサービス要望をどう確認し、対応を選んだか?

「店長をしていました」から、「状況を見て段取りを決めた」「相手に合わせて伝え方を変えた」へ。実際に行ったことを具体化すると、異業種の人にも説明しやすくなります。

厚生労働省も、業種や職種が変わっても持ち運びやすい能力を「ポータブルスキル」として整理し、仕事の進め方や人との関わり方を挙げています。

参考:厚生労働省「ポータブルスキル見える化ツール」

経験の棚卸しは「4行メモ」で一つの出来事から

いきなり職歴を全部まとめようとすると大変です。まずは、最近の仕事で少し工夫した場面を一つ選んでください。

  1. 場面:どんな状況で、何を任された?
  2. 工夫:自分は何を考え、どう動いた?
  3. 結果:何が変わった?課題は何?
  4. 次に生かすこと:応募先で使える点・学ぶ点は?

画像を保存して、経験の棚卸しや面接前のメモ代わりに使ってください。画像をタップすると大きく表示できます。

経験を転職に生かす4行メモ。場面、工夫、結果、次に生かすことを書き出すシート
数字や実績は、説明できる事実だけを書きましょう。

記入例:忙しい時間帯の役割分担を振り返る

以下は書き方を示すための架空の例です。ご自身の事実に置き換えて使ってください。

  • 場面:注文が重なり、誰が何を担当するか分かりにくくなった。
  • 工夫:残っている作業を確認し、担当と優先順位を声に出して共有した。
  • 結果:担当の重複は減った。共有が遅れた場面は課題として残った。
  • 次に生かすこと:状況整理と役割の共有。新しい職場の報告方法は入社後に学ぶ。

大きな表彰や売上の記録だけが材料ではありません。「なぜその方法を選んだか」を説明できる出来事も、書き出す価値があります。

効果を測っていない場合は、無理に「効率が30%上がった」などの数字を足さないこと。確認できた変化と、まだ分からないことを分けておくと、面接で詳しく聞かれたときにも説明しやすくなります。

私の実例:新人に「店の当たり前」を一から伝える

参考までに、私自身の飲食店店長時代の実例を挙げると、新人に仕事を伝えるときの工夫があります。

新人は、お店や業界の常識をまだ知らない。その前提に立って、自分が初めてこの業界に入った頃を思い出しながら、一から伝わるように説明を工夫しました。

この経験を4行メモにするなら、次のように整理できます。

  • 場面:新人が入店し、お店の仕事を伝えることになった。
  • 工夫:お店や業界の常識を知らないことを前提に、自分の初心者時代を思い出し、一から説明するようにした。
  • 結果・学び:この経験で振り返りたいのは、自分の「当たり前」を説明の出発点にしないという姿勢。
  • 次に生かすこと:相手がどこまで知っているかを考えて説明する。自分が未経験の仕事に入るときも、分からない前提や用語を確認する。

自己PRでは「新人教育を担当しました」に加えて、「相手は業界の常識を知らないことを前提に、自分の初心者時代を思い出して一から説明しました」と伝えれば、自分が大切にした行動まで説明できます。

製造業で担当した工程や改善経験を、転職先でどう伝えるか迷っている方へ。メーカーズジョブの記事に、担当工程・改善実績・希望条件の記入例をまとめています。専門分野に合う相談先を考える前の、メモの整理にも使ってみてください。

自己PRの書き方が分からない人へ|経験を面接で伝える4つの順番

応募先の仕事内容に合う経験を一つ選ぶ

メモができたら、求人票の仕事内容と照らし合わせます。お客様への説明が多い仕事なら接客の工夫、複数人で進める仕事なら役割調整の経験、といった選び方です。

自己PRは、次の順番で短く組み立ててみてください。

  1. 自分が得意としていること。
  2. それが表れた具体的な場面と行動。
  3. 確認できた結果や学び。
  4. 応募先で生かしたい点と、これから学ぶこと。

例えば「コミュニケーション力があります」と一言で終えるより、誰に、何を、なぜ伝えたのかまで説明するほうが、仕事ぶりを想像してもらいやすくなります。

参考:doda「自己PRを具体的にするための考え方」

面接は、練習と応募先の確認を分けて準備する

伝える練習には、録音して聞き直す方法や、家族・知人に質問してもらう方法があります。転職エージェントを利用している場合は、面接練習に対応しているか担当者に確認してみましょう。

場数を増やすためだけに、入社する気のない会社へ応募する必要はありません。実際の選考は、働きたいと思える応募先との相互確認の場。仕事内容や研修について、自分から聞く準備も大切です。

聞く内容に迷ったら、40代・未経験転職の面接で使える逆質問12例を参考にしてください。研修や入社後の役割を確認する質問をまとめています。

場数と転職準備について、よくある疑問

同じ職場が長く、特別な経験がありません

まず、新人の頃と今で対応が変わった仕事を探してみてください。以前は迷った判断、後輩に説明できる作業、お客様からよく聞かれること。普段は当たり前だと思っている対応にも、積み重ねが表れます。

40代から経験を広げるには、転職するしかありませんか?

今の職場で、普段と違う業務への協力や、新人への説明を任せてもらう方法も考えられます。上司と相談し、負担が増えすぎない範囲で試してみましょう。経験を増やすためだけに転職を急ぐ必要はありません。

経験を書き出せば、書類選考に通りますか?

棚卸しは伝える準備です。選考結果には、求人の条件や応募先との相性なども関わります。私も2020年の転職活動では、書類選考に苦戦しました。

当時の応募記録と、今なら見直したい準備は、40代後半の転職活動体験談【2020年当時】にまとめています。

まとめ|まずは一つの経験を、次に使える言葉にしよう

劇団員時代には、慣れた現場の外で戸惑いました。飲食店店長の仕事では、日々の判断を重ねる中で、対応の選び方を覚えていきました。

その経験を転職準備に生かすなら、「何年やったか」の先へ。どんな場面で、何を考え、どう動いたかを言葉にするところから始めてみてください。

今日やることは一つ。4行メモに、仕事で少し工夫した出来事を書いてみることです。話す材料が見つからないときは、そのメモを持って第三者に相談すると、具体的な話をしやすくなります。

相談先を探している方は、転職エージェントの比較記事も確認してみてください。